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多発している小児甲状腺がんの男女比について―福島で確認されている小児甲状腺がんの主原因は放射線被ばくによるー矢ヶ崎克馬
- 2016/03/14
福島県内の18歳以下の小児甲状腺がんの科学的分析については統計的な手法で津田敏秀氏らの論文がある(Tsuda et al. Epidemiology 2015 Oct. 5).彼らは
、4年の潜伏期間を仮定して3.11による過剰発生(すなわち放射能原因)が認められ、スクリーニング効果ではないことが判明したとしている。
物理的な手法では松崎道幸氏が福島で生じた甲状腺がんの男女比がチェルノブイリの甲状腺がん同様、自然発生の比率より小さくなっていること、および、医療被曝起因による甲状腺がんの発生は男女比はほとんどなく1に近いという事実により、自然発生ではありえないことを示した。
以上2つの科学的研究は十分に福島甲状腺がんの発生は放射線によることを示すものである。
これに対して福島県健康調査委員会は「放射線起因とは認められていない」と繰り返し、具体的化学的根拠は示していない。
本論は物理的考察により、放射線起因を主原因としなければ、福島の甲状腺がん多発の説明はつかないことを説く。
このことは次の行政的施策を速やかに実施する必要を提起する。
(1)津田氏ら松崎氏及び多数の方の指摘する通り、小児甲状腺がんはチェルノブイリ事故をはるかに上回る早期多発であり、政府および福島県は率直に放射線原因を認め、医療的な補償と予防医学的な措置を全面的に実施すること。
(2)放射線被曝は福島に限定されていない。政府の責任において、全国にわたって、甲状腺の検診を行い検出されていない甲状腺がんの危険から子どもたちを守ること。
(3)甲状腺がんは氷山の一角であり、あらゆる健康被害が放射線被曝により引き起こされている可能性がある。政府の責任において誠実な予防医学的防護を実施することが必要である。
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