最新知見・論文などの紹介
注目される厚労省の「平成26年度分担研究報告書」
- 2015/09/01
研究代表者 渋谷健司 東京大学大学院医学系研究科教授
研究分担者 春日文子 国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長
宮川昭二 国立感染症研究所国際協力室長
研究協力者 津金昌一郎 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長
津田敏秀 岡山大学大学院環境生命科学研究科教授
熊谷優子 横浜検疫所/東京大学大学院農学系研究科博士課程
研究要旨:
本研究班の目的にも鑑み、また、福島県民をはじめとし、日本国民の本疾病に対
する理解にも役立てるために、外部被ばくおよび食品などを介した内部被ばくも関
連する可能性のある甲状腺がんの発生に関し、疫学的検討を行った。
その結果、甲状腺がんの診断数が増えていることは事実であるが、過剰診断の可
能性が高いと考えられ、現時点で、甲状腺がんと放射線被ばくとの因果関係を検討
するのは、早急ではないかと考えられる。一方、因果関係を明確に否定することも
難しい現状である。放射線被ばくの影響を把握するためには、 甲状腺検査以外の
代替案(がん登録)なども検討の上、長期に亘り低線量放射線被曝の影響を調べこ
とが必要であると結論された。甲状腺がんの検診を進めるうえで、発生要因の過程
に基づいた発生予測シミュレーションを示す必要があること、福島県と周辺の県に
ついては、がん登録を推進し、がん登録と県民手帳(被ばく者手帳)を組み合わせフ
ォローアップする必要があること、福島第一原子力発電所事故に関連して甲状腺が
ん検診のガイドラインを作成する必要があること、外部被ばくの線量評価について
はWHO の報告書などを参考にしつつ、地域ごとの外部曝露の緻密な評価を行う必
要があること、作業従事者については放射線健康管理手帳の継続も重要であるこ
と、福島第一原子力発電所事故の影響に関する地域住民との十分な議論を行う必要
があることなどが抽出された。