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核兵器を廃絶して歪められた放射線被曝の研究体制を正そう 沢田昭二
- 2015/08/20
1 原爆被害隠蔽政策に歪められた放射線防護の研究体制
2 ABCC-放射線影響研究所の疫学研究の欠陥
3 DS86の原爆残留放射線の線量評価
4 放射性降下物による被曝影響
おわりに
<おわりに>より
原爆被爆者に関する多くの調査があり、科学者はこれら被爆実態を示す貴重な資料から、近年急速に発展している分子レベルでの医学的・生物学的研究と合わせ、内部被曝の機構を含む科学的な研究を発展させることが求められている。しかし、今なお真面目に被曝影響の研究をしている多くの医学者や科学者は、ICRPや原子放射線の影響に関する科学委員会(UNSCAER)の放射線防護基準の欠陥に気づいていない。
世界世論の高揚が、今日では核兵器禁止条約の交渉開始を求める大きな潮流になって、核兵器保有国を追いつめている。核兵器禁止条約が実現すれば、核不拡散条約の下で、世界中に放射線被曝の危険性をばらまくIAEAの原発推進政策の矛盾が浮かび上がる。こうして科学者が放射線被曝の実相、とりわけ内部被曝の危険性について科学的解明を進め、市民との共同によって、人類社会が核兵器も原発もない、放射線被曝に脅かされない世界への展望が開けると期待している。