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政府資料「放射線リスクに関する基礎的情報」の問題点 山田耕作
- 2014/03/26
第1章 はじめに
第2章 放射線被曝をめぐる争点
第3章 「基礎情報」の問題点‐住民の健康と命を犠牲にするリスク政策
(以下「放射線リスクに関する基礎的情報」の節に沿っている)
0節 本資料の位置づけ
1節 空間線量の経年変化
2節 事故直後の外部被曝の状況
3節 個人線量計における外部被曝の状況
4節 初期の内部被曝の状況
5節 甲状腺検査の状況
6節 現在の内部被曝の状況(ホールボディカウンター検査)
7節 食品中の放射性物質から受ける内部被曝の推計
8節 各種環境モニタリングの実施状況
9節 WHO, UNSCEAR の評価
10 節 身の回りの放射線
11 節 日常生活における放射線被曝
12 節 世界の自然放射線の状況と健康影響
13 節 放射線の健康への影響
14 節 放射線防護を講じる際のICRPの基本的考え方
15 節 今回の原子力災害に対する我が国の対応
(参考2)チェルノブイリ原発事故との比較
用語解説
外部被曝と内部被曝
確定的影響と確率的影響
放射線による DNA の損傷と修復
第4章 「基礎情報」のその他の問題点
1.予防原則の無視
2.リスク・ベネフィット論は強者の論理
3.国際的権威ではなく、被害者の立場で被曝の真実を記述すべきである
4.閾値と集団線量
5.疫学の軽視や無視
6.低線量被曝における重大な被害
7.低線量被曝の甚大な被害と食品の厳格な管理の必要性
第5章 おわりに
参考文献
追記 ブログ「東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌-Google トレンドは嘘をつかない-」
第1章 はじめに
「放射線リスクに関する基磯的情報」1)(以下「基礎情報」と呼ぶ)は政府の内閣府をはじめ 10 の関係省庁の協力によって作成されたものである。福島原発事故後 3 年を経た現在、政府は年間 20 ミリシーベルト以下の被曝量の汚染地への住民の帰還を進めている。その際、高線量の汚染地でも住民が被曝量を自己管理して被曝を個人の努力で減らすよう指導している。これは政府と東電の責任を住民個人に転嫁し、住民の被曝の犠牲によって帰還を進め、被害の賠償責任を逃れるための政策である。その政策を進めるために、この「基本情報」を住民の被曝の危険性と被害を隠ぺいするための手段として利用しようとしている。
この「基礎情報」は 56 名もの放射線に関する学会の権威・有識者の協力のもとに作成された。しかし、その内容はチェルノブイリで見いだされた心血管系や生殖系の被害や免疫力の低下などの広範な被害を無視し、被曝の被害を癌と遺伝的影響に限定し、しかもそれを過小に評価する危険な「情報」である。この「基本情報」の作成者の行為は私には子供や住民をだまして被曝の脅威にさらす危険な行為のように見える。