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福島事故による放射能放出量はチェルノブイリの2倍以上 ――福島事故による放射性物質の放出量に関する最近の研究動向が示すもの 山田耕作・渡辺悦司
- 2014/08/14
われわれは青山氏らの方法やレスターらの数字を基に、福島事故による総放出量を①②③の合計として計算し、チェルノブイリ事故との比較を試みた。その結果、福島事故は、政府・マスコミの事故直後からの評価のようにチェルノブイリ事故の「約1割」「10分の1程度」「1桁小さい」ものでは決してなく、チェルノブイリ事故に関する国連科学委員会を含む主要機関のどの推計と比較してもチェルノブイリ事故を上回り、2倍超から20数倍の規模であることが明らかになった。また米ネバダ核実験場での地上核実験の爆発総出力と比較しても、福島の大気中放出量の換算爆発出力は、ネバダの合計を上回り、その3.6倍であった。福島県における子どもの甲状腺ガンのアウトブレイクの立ち上がりがチェルノブイリに比べて非常に速いが[参考文献17]、このことはチェルノブイリ事故と比べた福島事故による放射性物質の放出量の大きさと関連している可能性がある。われわれは、福島事故によるものと考えるほかない健康被害や人口減少が大規模に現れ始めている現在、あらためて放出量の推計に注目すべきであると考える。
目 次
1.原発事故による放射性物質の放出量比較の意義と限界
2.放出量比較の批判的検討――クリス・バズビーによる
3.青山氏らのグループの数字が示したもの
(1)青山氏らの数字による福島とチェルノブイリの比較
(2)結論を避けた印象
(3)青山氏らの数字の補正
4.汚染水タンクに含まれる放射能量による上記結論の検証
(1)広島原爆との比較
(2)チェルノブイリ事故による放出量との比較
(3)福島事故の現状
総 括
注 記
参考文献
付表1-1 福島原発事故による放射性物質の大気中への放出量
日本政府の当初の推計
付表1-2 福島原発事故による放射性物質の大気中への放出量
日本政府の推計改定値
付表2-1 青山氏らによるチェルノブイリ事故による放出量
(単位ペタベクレル=E+15)
付表2-2 青山氏らによる同福島事故による放出量
(単位がE+nで表記されていることに注意。
チェルノブイリ表の単位ペタベクレルはE+15である
付表3 レスターらによるカリフォルニア州資源局沿岸委員会の
レポートによる福島の放出量の総括表
付表4 国連科学委員会の報告によるチェルノブイリの
残存量と放出量の推計表
付表5 広島原爆による放射性物質の放出量 代表的な推計
付表6 ネバダ核実験場における地上核実験での核爆発の総出力
福島事故による放射能放出量はチェルノブイリの2倍以上 ――福島事故による放射性物質の放出量に関する最近の研究動向が示すもの 山田耕作・渡辺悦司(PDF)