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福島県庁で「甲状腺検診は縮小でなく拡大すべき」の申し入れを、知事あてに提出
- 2016/12/26
福島県知事への申し入れ
甲状腺検診は「自主参加」による縮小でなく、拡大・充実すべきです
2016年12月26日
呼びかけ人
益川敏英 名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長
池内 了 総合研究大学院大学名誉教授
崎山比早子 元放医研主任研究官
沢田昭二 名古屋大学名誉教授
島薗 進 上智大学教授
矢ヶ崎克馬 琉球大学名誉教授
松崎道幸 道北勤医協旭川北医院院長
宮地正人 東京大学名誉教授
田代真人 低線量被曝と健康プロジェクト代表(事務局)
笹川陽平 日本財団会長(委員長)、喜多悦子 笹川記念保健協力財団理事長、丹羽太貫 放射線影響研究所理事長、山下俊一 長崎大学理事・副学長、Jacques Lochard 国際放射線防護委員会副委員長、Geraldine Anne Thomas インペリアル・カレッジ・ロンドン教授らは2016年12月9日、第 5 回放射線と健康についての福島国際専門家会議の名で、「福島における甲状腺課題の解決に向けて~チェルノブイリ 30 周年の教訓を福島原発事故 5 年に活かす~」と題する「提言」を福島県知事に提出しました。
東日本大震災による福島第一原発事故と小児甲状腺がんの関連を検討するために行われてきた小児の甲状腺検診で、これまで170名以上の小児甲状腺がんおよびその疑い例が発見されています。
「提言」の要は、「検診プログラムについてのリスクと便益、そして費用対効果」の面から、「甲状腺検診プログラムは自主参加であるべきである」という事です。「提言」は、あれこれの理由をあげて「甲状腺異常の増加は、原発事故による放射線被ばくの影響ではなく、検診効果による」などと述べています。私たちは、以下に示した諸点の検討結果から、福島県民健康調査において発見された小児甲状腺がんが、専門家の間でも様々な意見があるものの、放射線被ばくによって発生した可能性を否定できないこと、そして、今後の推移を見る事が重要で、甲状腺検診を今まで以上にしっかりと充実・拡大して継続する必要があると考えます。
検診は2011年10月から始まりました。発がんまでは数年かかるという前提で、事前に自然発生の甲状腺がんの有病率を把握する目的で先行調査が開始されました。その結果、予想以上に甲状腺がん有病者が発見されましたが、今後は本来の目的である事故による影響で、甲状腺がんの増加の有無を調査するために検診は継続すべきです。検査を縮小すべき医学的な根拠はありません。検診の原則の一つはハイリスクグループを対象とすることです。今回の福島原発事故による放射性ヨウ素による被ばくは検診対象となるハイリスクグループの子供達を生み出したものであり、検診は継続すべきです。
放射線誘発悪性新生物の発生は医学的には長期的に続くものと考えられており、今後も長期的な検査体制の続行が望まれます。事故後6年を経過しようとしていますが、高校を卒業し就職したり大学に進学したりして福島県外に出る18歳以上の人達も県外で甲状腺の検査が受けられるような処遇・体制の整備が必要です。こうした問題も含めて、国の責任で原発事故の放射線被ばくによる健康影響を最小限に抑え健康管理を促進するために、福島県とその周辺地域の住民に健康管理手帳の支給を国に申し入れるべきだと考えます。(文書は12月26日、田代ら4名が102賛同者を添え福島県庁で知事宛に申入れました。)